抱きしめてしばらくすると、深崎が



「社長、そろそろ離してください」


と、言うので名残惜しかったが黙って離した。



深崎はやはり、追い詰めた顔をしていたので

取り敢えず座らせて、コーヒーを渡した。



「すいません、すぐすみますので

お気遣いなさらずに」



深崎って、こういうとこ謙虚だよなぁ。


なんて、思ってる場合じゃないか。



俺はさっそく、言いたいことを口にした。



「別に今回のことは、深崎は何も悪くない。

気にすんな」



「そんなわけないじゃないですか!

私が社長に甘えて、助けてもらってなければ

前回の噂も今回のことだって起きなかったことなんです」



なんて、必死になって言ってくる深崎。


もしそうだとしても、今回この街の動物園を選んだ俺のミスだ。

なんも、深崎が気にすることじゃないのに。



「深崎、俺は好きでやっていたことだ。

今回、もっと警戒して遠い動物園を選ぶべきだった。


なのに俺は、警戒心なくこの街の動物園を選んでしまった。

俺のせいだ」



もっと遠い動物園を選んでいたら、こういう事態は起きなかったであろう。