大丈夫と伝え、立ち上がろうとしたら…



「社長、離してください」


社長に抱きしめられた。


どうして抱きしめられたかなんて、わかるはずもない。



「無理、見てられない。帰るぞ」


……は?何言ってるの?



「18時半にあの子を保育園に迎えに行けばいいんだろ?俺が行くから、それまで帰って寝てろ。いいな?」


そう言った社長は、内線で誰かと話し始め終わったかと思うと私を引っ張り出した。



「あの、社長…」


「荷物持ってこい」


そう言って事務課まで引っ張ってきて、早くと言わんばかりに睨んでくる。


事務課のみんなは、不思議そうにこちらを見てきて居心地も悪い。


仕方ない、社長の言う通りにしよう。



そう思い荷物を持つと、橘先輩が話しかけてきた。



「深崎さん、どうしたの?社長と一緒にいたし」


「あ、えっと…」



なんて答えようか迷っていると


「深崎さん、体調悪いみたいだから早退させるね。部長に伝えといてもらえる?」


と、社長がいつもの優しい笑顔で話す。



それから、橘先輩と社長がしばらく話してるのを黙って聞いていた。