近藤さんが流山で捕まった。

ある日、鏡が映し出した向こうの時間。
それは近藤さんの最期の日が近づいていると言うことだった。


ここ数日の鏡が映し出す時間は、
見ているのが辛くなる。


仲間だった皆が、バラバラになっていく時間。


新選組として喧嘩もしながら同じ時間を過ごしていた仲間たちが、
一人、また一人と隊を離れていく。



だけど向こうの時間は辛い時間が続いているけど、
こちらの時間では少し、いい出来事があった。


二学期が始まってもうすぐ二ヶ月が過ぎようとしている。


本来なら、二ヶ月から三ヶ月の入院が必要だと予測されていた山波敬里として生きる総司が、
治療の成果が実って、「退院させることが出来る基準」となる、
症状の消失・痰検査の三回の陰性がクリアすることとなったのだと花桜のお祖父さまから連絡が入った。


一週間に一度の通院は余儀なくされるものの、
今日は総司が退院する日。


総司の退院は、花桜のお祖父さまの配慮で学校が休みの土曜日に設定されていた。


その朝、起きて早々着替えを済ませて朝食をとり、花桜の自宅へと向かう。
そこで鏡を覗き込む。



鏡は数人の隊士たちと共に山の中を移動している花桜と敬里を映し出していた。


「えっ?
 花桜たち、何処にいるんですか?」


映し出す映像が特徴あるものではないと、
脳内に詰め込ん知識との時間が見定められなくって不安になる。


近藤さんは?もう斬首されたの?



「瑠花さんや。
 お待たせしましたな」


そういって姿を見せた、お祖父さま。

そしてお祖父さまの後ろに控えながら立つ、
お祖母さま。



「花桜と敬里は、多分、会津に向かっている」

「会津……」


例え、会津に辿り着いたとしても救われない出来事ばかり続くのを私は知ってる。

今の私は、現代に居る。

だけどあのまま、私が幕末に残り続けてたら今頃、何をしてるんだろう。


総司の療養に付き合って今頃は、花桜たちと別行動をしているのかな?
それとも……総司に追い出されて、花桜たちと会津を目指してるのかな?


考えても仕方ないけれど、
そんな疑問が沸き上がっていく。


鏡が映し出す世界で、花桜たちが何を思ってその道を選んだのかまでは、
音声の聞こえない映像のみの情報では推測することしか出来ない。


そんなもどかしさを強く感じる。