甲陽鎮撫隊が崩壊して、江戸に逃げ帰った後、
私たちは大きな別れを体験していた。

部隊崩壊後、残された隊士たちはそれぞれにわかれて
江戸までの道のりを進んでいた。

斎藤さんが指揮を取りながら移動をした負傷班。

そして万端に動けるものを中心として、
近藤さんたちと一緒に行動をとっていた隊士たち。


その時、何があったか今のこの時間ではわからない。

ただ一つだけわかっているのは、
昔も今も、歴史は変わっていないということだけ。

嘉賀舞ちゃんが歩んだ歴史のように、
今また……ずっと新選組として戦ってきた、原田さんと永倉さんが離脱しようとしている。
それだけは、はっきりとした現実。


私たちがその事実を知ったのは、
負傷兵たちを医学所へと送り届けて近藤さんたちの元に戻った時だった。


「行くのか?」

斎藤さんに問われた永倉さんは、
私たちの方を向いて言葉を紡ぐ。

「俺たちは会津に行く。
 吉野宿で一同で話し合って決めた。

 お前も一緒にどうだ?
 俺たちは今の近藤さんにはついていけない。
 
 我々は同志であったはずだ」

「あぁ、俺たちは同志として誠の旗のもと、
 今日まではやってきた。

 だけど……あいつを誘ったら、その意思は自分にはないが、
 家臣として使えるなら行ってるやると来た」


そう言って、原田さんと永倉さんは悲しそうな表情を見せた。

私は斎藤さんの傍で昔と同じように決別の道を辿っていく時間を、
何もできず呆れたように見届け続ける。

だけど隣に居た花桜は違った。


「永倉さん、原田さん。

 もっと近藤さんや土方さんと話し合うこと、あるんじゃないんですか?
 近藤さんの言葉は、真実の言葉ですか?」

そう言って、二人に鞘から解き放った沖影の切っ先を向けてまっすぐに見つめて問いかける。