総司が読んでいる本を覗き込むと、
そこには新選組の歴史が綴られているみたいだった。
「山波さん……。やっぱり僕も、お祖父さんとはなかなか呼びづらいですね。
あの人が、山南さんの血をって思うと、僕も感慨深くなりました。
この本は、家にあったものを持ってきてくださったんです。
今、現代で伝わっている『新選組』の歴史が気になるなら読みなさいっと。
今はまだ、芹沢さんがいる頃の話なんですけどね。
面白いですねー。月の時代では、こんな風に伝わっているんですね」
そう言いながら、総司は、本の中に出てくる懐かしい名前を、指先で辿っているようだった。
「瑠花、近藤さんたちは?」
ふいに呟く総司の声。
「苦戦しているみたいです。
さっきは、甲州勝沼の戦いの最中でした」
「……甲州……勝沼の戦い?
僕が知らない戦が、どんどんあるんですね。
僕が動ければ……少しは役に立てていたのでしょうか?」
そういった総司は、次の瞬間、自らの思いを否定するように言葉をつづけた。
「あぁ……確か、この世界の歴史に伝わる僕は、その戦いにも参加できていなかったんですよね。
だったら……夢でもいい。
今の僕の身におこっていることは、望んでもない現実なのかもしれませんね」
そう言って、総司はベッドの上で静かに瞳を閉じた。
その総司は、何故か遥か遠くに思いを馳せているみたいで……。
総司がどこか遠くへ消えてしまいそうな不安に駆られて、
思わず「総司?」っと声をかける。
すると少し驚いたような表情を見せた後、
総司は私に笑いかけた。
「目を閉じていると僕は、向こうの世界を感じることが出来るんですよ。
砲弾の近づいてくる感覚も、必死に逃げている感覚も……。
だけど、その全ては夢なのだと思っていました。
でも瑠花の話を聞いて、僕もこの場所で戦いに関われるのかもしれないと……」
総司はそう言うと、再び目を閉じて、
遠い仲間たちの世界へと想いを馳せているみたいだった。