春が近くなった頃、私と花桜はこの世界に来て初めての、
制服以外の洋服に袖を通して、任務へとあたっていた。

生き残った新撰組の隊士70名余り。
そして新たに浅草新町の弾左衛門さんという人の配下を仲間にして、
200名余りになった部隊は、3月1日に甲府城を目指して出発した。


私たちに新たに与えられたミッション。



それは、官軍が来る前に甲府城を守り、今後の戦いを有利に進めること。



だけど最初は順調に動いていた行列も、連日の悪天候が重なり隊士たちの動きが鈍くなり速度が遅くなった。
そして恐れていたことが始まった。


寄せ集めの集団ゆえに、最初から分かってたはずなのに、行列から脱走し始めるものが一人、また一人と現れた。

それゆえに、必死に心を繋ぎとめようとしているのか、
馬鹿みたいに、連日連夜、お酒を振舞われる日々が続いた。


スピードが命の行列は、行列の足を止め、バカな大名行列へと変貌する。
夜が来るたびに、軍資金で大量に購入されたお酒を、寄せ集めの隊士たちにお酌する日々が続いた。



「加賀、こんなことまでさせてすまない」


今日の宿となった民家の台所を借りて、お酒の準備を続けていた。


「別に……。
 お酒のお酌をするのはどうってことないけど、
 スピードが命のミッションに、こんなにものんびりと、役立たずの機嫌を取りながら行くなんて、
 どうかしてる?

 そんな人たち、早く解散してもらう方が、軍資金も減らなくて済むじゃない」


思わず零してしまう本音。


斎藤さんは「スピード?ミッション?」っと首をかしげながらも、
私の愚痴を最後まで聞き続けてくれた。



「加賀、お前の言葉は時折、不可思議だな。
 局長は意味があって、なさっている。
 加賀の意見もわかるが、今は局長の意のままに。

 いざとなれば、俺が先に甲府城に先行する。」



っとは言うけど、イライラするものはイライラするっ!!