瑠花とこの世界の沖田総司が多分、現代に旅立った。

そして入れ替わりにやってきた、
私たちの幼馴染、山波敬里。

敬里は、敬里としてこの世界に存在するわけでなく、
沖田総司として受け入れられた。

敬里が沖田総司ではなく山波敬里であると認識できているものは、
今のところ私と花桜の二人しかいない。


そしてそんな敬里も負傷した近藤さんが治療の為に、
大坂城へと向かうことになりその護衛の為、史実通りにここ伏見奉行所から旅立っていった。


船旅を続けて、今頃は大坂へ辿り着いているだろうと思う。


右も左もわからぬままに、
突然、沖田総司としてこの世界で歩き続ける宿命を背負った敬里。


だけど今の私は、こうなる宿命だったのだと……、
もう一人の舞の願いが成就されたことを感じている。


もう一人の舞を通して、ここから先の私たちの身に起こることはわかっているから。



後世の歴史において、滅びの美学なんて言葉で片づけられてしまう
壮絶な戦いの記憶が今の私には、心の奥深くに刻まれてる。


嘉賀舞の思いと共に……。




「ねぇ舞、どうしたの?
 何か思いつめた顔してる」



炊事場での洗い物の手を止めて、
花桜が私の方を覗き込んでくる。


「あっ、ごめん。
 いつの間にか、手が止まってたね」


慌てて私も、桶の中に手を入れて洗い物の続きをしていく。
二人で作業して洗い物を終えると花桜が手にしていた、てぬぐいを私へと手渡した。

手ぬぐいで濡れた手をふき取ると冷たい井戸水にかじかんだ手に息を吹きかけながら、こすり合わせた。

私の隣で、顔も同じように手をこすり合わせてる。