呼び出されたのは二月の終わりのことだった。

上野寛永寺で謹慎中の慶喜公の警護を担当していた新選組の新たな任務が決まった。
新たな任務は甲陽鎮撫。


官軍が江戸に入る前に脱走歩兵の鎮撫と言うのが、
与えられた役割だった。


「近藤さん、土方さん」


私と舞は出発の日の朝、身支度を整えて
新たな任務へと旅立つ皆の前に姿を見せる。

近藤さん以外の新選組の隊士たちや、幕府より与えられた兵士たちは、
洋服へと装いを変えていた。

そんな皆を見つめる私と舞は和服のままだ。


「おぉ、山波君、加賀君来たのかね」

「はい」

「ただその名を大きく紡がれては困るよ。
 今は大久保剛と名乗っている。
 歳も今は、内藤隼人と言う」

「あっ、すいません……」


二人して聞きなれない名前を耳にして謝罪する。

「後は、今は新選組ではない。
 甲陽鎮撫隊と名乗ることになる」

「かっちゃん、そろそろいいかい」
「歳……いやっ、内藤君……何度も言ってるだろう」

私たちには名前の訂正をしながらも、土方さんと近藤さんの二人も言い慣れた名前を呼んでしまっている。


すると洋服に身を包んだ、沖田総司として存在する敬里が、
今度は私たちの方へと近づいてくる。