大坂から富士山丸に乗り込んで横浜へと辿り着いた私たちは、
今も肩の銃弾が取り除けていない近藤さんや、あの鳥羽伏見で負傷した隊士たちと共に、
神田にある医学所へと向かった。

そこで治療を受ける物は、治療を受け始めた。
よくもまぁ、ここまでボロボロになるまで戦ったなぁ。

京から江戸まで離れても、私たちは追われる身であることは変わりなくて、
ほっと一息つくことも本当は許されないのかも知れないけど、
無事に目的地へと辿り着いた安堵感は、私の今のありのままの現実へと立ち返らせた。

鳥羽伏見の戦いが始まる前、 私たちの戦装束として身に着けていたのは、
未来の世界から身に着けてきた制服だった。

その制服は、泥にまみれて、あちこちに擦り切れ、止血の為に自らの手で引き裂いて無残な姿だった。
制服に、胸元を抑えてた晒(さらし)。

使えるものは、何でも使って隊士たちの止血を必死にした。

それは花桜も同じ。
そしてボロボロになった制服の上から、用意された着物を身に着けて、
その後も駆けずりまわった。

そんな着物も今や、血や泥にまみれて無残な姿だ。

改めてそんな我が身を振り返りながら、私は立ち尽くす。
そして、ふと何がおかしいわけでもないのに、自虐的に笑みが零れ落ちる。


肩の銃弾を取り除く手術を受ける近藤さんをはじめ、
あの場所で負傷した隊士たちは、この医学所でそれぞれに治療されて、休息へと入っていた。