「今は体力の回復も必要じゃて。
 点滴の薬の中に、眠りやすくなる薬が入っているそうじゃ」




総司の体に掛け布団をかけなおすと私はお祖父さんと一緒に病棟の外へと出た。





総司が眠る病室にかけられた名前は、山波敬里。
アイツの名前だった。


だけど、その部屋で眠っていたのは沖田総司。



だったら敬里は?
アイツは何処に行ったの?




花桜の家へとお祖父さんと帰りながら、
私はその疑問をお祖父さんにぶつけてみる。




「今は敬里は幕末じゃよ。

 あの彼、沖田総司がこの世界に来た時、
 敬里は歪に巻きこまれて、幕末へと旅立ったよ。

 今は敬里が沖田総司として生きておるよ。

 瑠花さんが大切に慕い続ける沖田総司が、
 山波敬里であるように。


 それぞれの世界は、入れ替わることで二人の存在を受け入れたようじゃ」



お祖父さんの呟いた言葉は、
私の中に新たな使命を抱かせる。




現代に居ながら過去と未来、
それぞれの時代を生き抜く親友の行く末を見守り続けること。





二つの時代で繋がった絆は、
必ず私たちの時間を再び繋げてくれると信じて……。