「瑠花ちゃん、大変だったわね。
倒れていた方は助かったの?」
「うーん、まだわからないの。
手術の途中で帰ってきちゃった。
明日は夏休み最後の登校日だから」
「そうねー。
夏休みも終わっていくわね。
瑠花ちゃんも受験の準備を始めてないといけないわね」
「うん。知ってる。
ちゃんと将来も考えてるから」
ママを心配させないように、そうやって言ってみるものの、
まだ花桜たちのことで頭がいっぱいで、受験モードになんて入れない。
翌日、学校の後、山崎さんの入院している病院を訪ねる。
救急で昨日の話をした後、気になって来たことを告げると、
受付の人は、病棟のナースセンターを教えてくれた。
教えられた病棟へとエレベーターであがって赴くと、
そこで私を迎え入れてくれた看護師さん。
「あなたが岩倉さんね。
昨日、搬送されてきた患者さん、意識は取り戻したわよ。
神社を参拝中に倒れている人を発見したのね。
あなたも見てたと思うけど、体には銃創があってね。
だけど、その銃の弾は今では珍しい旧式のものだったらしいわ」
その言葉に、やっぱり山崎さんは幕末の時代で戦を経験して、
この世界に辿り着いたことを確信する。
「えっと、その患者さんは順調に回復されていますか?」
「意識は戻って、傷口の痛みも薬でコントロール出来ているわよ。
でも問題は、記憶障害かしら?
倒れる前のことは何も覚えてないみたいね。
銃創も見つかったし、警察は何らかの事件に巻き込まれた可能性が高いと踏んで、
行方不明者の情報をさらっているみたいね。
午前中に、あなたが昨日一緒に居た、山波さんって言う方もいらしたわよ。
身元不明者ならば、発見したよしみで気になるから、
記憶が戻るまで社会復帰を手伝いたいと申し出てくれたわ」
そう言って、看護師さんは花桜のお祖父ちゃんがもう来ていたことも教えてくれた。
「私も……またお邪魔していいですか?
学生ですけど、記憶を取り戻す手伝いも出来るかも知れませんし」
「えぇ。
もう少し話せるように回復されたら、お見舞いに来てあげて」
そう言ってくれた看護師さんに、ゆっくりとお辞儀をして私は病院を後にした。
次に向かうのは、総司が入院しているパパの病院。
その途中、私は図書館へと立ち寄って幕末関係を記しだ本を一冊借りて、
貸し出し手続きをした。