「花桜……」
「ごめん。お待たせ、舞。
さて、私たちの戦場に行こう。
ちゃんと一歩を歩き出すから」
「うん」
髪にさした、螺鈿細工にそっと触れると深呼吸をして、
隊士たちが待つもう一つの部屋へと歩き出した。
「おぉ山波、加減はいいのか?」
その部屋を出た途端に、声をかけてきたのは土方さん。
「ご迷惑おかけしました。
また宜しくお願いします」
「あぁ」
短い、そんな一言だったけど……その一言の中に、土方さんの沢山の感情が詰め込まれているのは多分、
今回も同じなんだと思う。
どんなに悲しくても、朝はやってくる。
光を連れて……。
「遅くなりました。
傷口、消毒して包帯かえますね」
私の役割が与えられている船室へと足を踏み込んだ途端、
私は今、為すべき仕事と向き合って、今出来ることをこなしていく。
こうやって、消毒や包帯を巻くのが出来るようになったのも、
丞が教えてくれたから。
丞が生きてきた証は、
私の中にも息づいてるから……。
だから私が……向こうに帰れても、
帰れなくても、この世界で命を落としたとしても、
最期の最期には……舞の大切な人が約束してくれたみたいに、
私を迎えに来て抱きしめてくれますか?
そんな日を掴み取るために、
今は……前を向いて、丞が見ることが出来なかった先の未来もしっかりと見つめたい。
そんな風に思えた。