約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)



「お世話になっています。
 山波です」


そう看護師さんに声をかけると、
看護師さんは私たちにマスクを渡す。


手渡されたマスクをつけて、看護師さんの後を歩いていく。


足で何処かのスイッチを抑えてドアが開くと、
そこは閉ざされた空間だった。




「瑠花さん、ここは結核病棟じゃよ」



結核?
その言葉に私は、ずっと気にかかってる総司の存在を思い浮かべる。



「手渡されたマスクはなんか特殊なマスクらしくて、
 結核菌を通さないようになってるそうだ。

 この結核病棟自体も、菌が外に出て行かない作りになっているそうだ」



お祖父さんがそうやって私に説明してくれた。



「はい、山波さん。
 敬里さんですが今朝からこちらの部屋に病室が変わったんですよ」



なんだ……敬里かっ……。
えっ、でもさっき花桜の家で、お祖父さんは、お祖母さんに花桜と敬里を頼むって言ってた。




「それでは面会は15分以内でお願いします」


そう言って、ベッドに眠る人の何かを確認して病室を出ていく看護師さん。




「ほらっ、瑠花さん……中へどうぞ。
 彼が君に会わせたかった人じゃよ」




お祖父さんが差し出してくれた手を取って、
背中を押されるように病室へと入って、ベッドで眠り続ける人を覗き込む。





嘘……、総司……。




溢れだす涙を拭うこともしないで、
私は血色の悪い総司の顔に手を触れる。



私が触れたことに反応したのか、
総司の瞼が震えて、その瞳が開かれる。




「……瑠花……」

「総司、良かった。
 会いたかった」

「ここは?」

「ここは私が住んでいる世界。
 鴨ちゃんが来たがってた、月の世界。

 月の世界の療養所だよ。
 この世界では、病院って言うの」

「……びょういん……」



それだけ会話すると総司の目は再び閉じられて寝息が聞こえる。