「総司、おはよう」
「あぁ、瑠花。来てくれたんだね」
「総司、今日は顔色がいい。調子良さそうだね」
「今日はいつもの薬を飲んでも熱も出ずに何とか過ごせているよ。
体も軽い。
ただこうして体が軽くなると、刀を手にして体を動かしたくなるね」
「またそんなこと言って。
でも向こうに居たら、多分、そんなことしてるんだよね。
だけど今は、ちゃんとゆっくり休んでね。
元気になったら、思う存分、花桜の家の道場で練習させてもらって」
「山波の家は道場主だったんでしたね」
「そう。
だからこの世界で山波敬里の名を持つ総司も、
その道場に名を連ねてる一人なんだよ」
「……やまなみとしざと……。
そうなんですねー。
この世界の僕の名は、山波敬里。
だけどまだ慣れないですねー。
瑠花……ずっと、瑠花たちはこんな思いで幕末の日々を過ごしていたんですね。
この世界は、瑠花たちの住む月の世界なんでしょう。
僕は月の世界に来て、こうして結核の病を治そうと治療して貰ってる。
芹沢さんがびっくりしてしまいますね」
「そうだねー。
鴨ちゃんも来たかっただろうねー。
この世界に居たら、鴨ちゃんの病気もなおせたのかな?」
そう呟きながら、総司のベッドの傍の椅子に腰かけて窓から遠い空を眺める。
「……瑠花……教えてください。
今、新選組は?近藤さんや土方さんはどうしていますか?」
ふと小さく告げられた言葉に私は、もう隠し通すことが難しいのを悟る。
隠せるものなら隠していたい。
だけどずっと隠され続けるのも辛い。
今の総司には、私しか頼れる存在はいないのだから。
私は覚悟を決めて、総司が闘病中に起こった鳥羽伏見の戦いを鏡で見たままを語り始めた。
「……敗れた?……
井上さんが死んだ?
山崎君まで……」
全てを聞き終えた後、総司は呟いて咳き込み始めた。
総司が咳き込み始めると、モニターの波形が乱れ始めてすぐに病院の医師や看護師さんたちが病室に駆け込んできて、
私は病室の外へと追いやられた。
暫く病室の外で立ち尽くしたまま祈っていると、
中からドアが開いて私を迎え入れてくれた。