「瑠花ちゃん、大変だったね。
孫はまだ幕末じゃよ」
孫はまだ幕末だよ。
その言葉に私が薄らいでいく感覚が、
私の生き続けた現実だったのだと取り戻すことが出来た。
「驚いたかい?
ばーさんや、今、瑠花ちゃんが戻ってきて訪ねてくれたよ」
そう言うと丸い鏡を手にした花桜のお祖母ちゃんが、
ゆっくりと顔を上げて私を見つめた。
「お帰りなさい。
瑠花さん、いろいろと大変だったね。
花桜を助けてくれて有難う」
そう言ってお辞儀をした。
「どうして私たちが幕末に居たことをご存じなんですか?」
そう問いかけると、花桜のおばあさんは手招きをして私に鏡を見せてくれた。
そこに映し出されるのは、
今も幕末で戦い続ける花桜たちの姿。
「花桜っ」
そう、あの場所に私も総司も合流予定だった。
鳥羽伏見の戦いが今、火蓋をきろうとしていた。
「ばーさん、花桜と敬里を頼むよ。
わしは、少し瑠花さんと出かけてくるよ」
そう言うとお祖父さんは私に
「会わせたい人がいるんじゃ。少し付き合ってもらえぬか」っと私を手招いた。
お祖父さんが手配したタクシーにのって、
向かったのは病院だった。
お祖父さんはその病院の中に入って、
面会の手続きをとるとエレベーターに乗り込んで7階のボタンを押す。
上昇していくエレベーターが浮遊感と共にとまってドアが開く。



