「山崎っ!!
 
 斎藤、永倉、手を貸せ」



そう言うと土方さんたちの手によって、
山崎さんの体が私から引き離されていく。


「花桜、大丈夫?」

そう言って、私を確認するように体に触れていく舞。
そして舞はゆっくりと手を伸ばす。

舞の手を取ってゆっくりと立ち合がると、
立ち眩みがして、舞に体を支えられた。

暫くじっとしたまま、再び、ゆっくりと目を開けると、
信じられない光景が目に入ってきた。


丞が負傷してる。
斎藤さんたちが、すぐに手当てをしているものの、なかなか血が止まらない。



「烝……」

「……花桜ちゃん、無事やったな。
 わいは、約束は守る漢【おとこ】やで」

「バカっ」


涙が溢れ出して制御できなくなった私は、
そんな言葉しか丞に返せなかった。

その後、丞は意識を失った。



負傷者たちを連れて、本陣へ戻った私たちは、
そのまま大坂城へと移動した。




だけど最終の砦になるはずの、その場所に、
この戦の首謀者の一人でもある、将軍の姿はなかった。



総大将が逃亡した旧幕府軍に、勝機はあるはずもなく、
各藩、散り散りになっていった。



「花桜、舞、無事だったか?」


大坂城に入って再会したのは、あの日、別れた敬里。


「敬里っ。
 幕府は、徳川はどうなってるの?」

「深夜遅く会津公を連れて、
 そこにいる榎本さんの開陽丸を乗っ取って江戸へと帰ったよ。

 近藤さんと一緒に、俺たちは、富士山丸で帰る準備をして待ってたんだ」

「近藤さんは?」

「近藤さんは奥で体を休めてるよ。
 これから移動がある。長旅だからさ」



そう言った敬里は、なんだか凄くたくましく思えた。



早急に準備を整えた私たちは榎本武揚さんの力を借りて、
負傷した兵士たちを連れて、大坂を後にした。