「お前たちの方はどうだ?」

「見回組、佐々木が重傷。
 味方が散り散りとなり、官軍の包囲にあいましたが、
 なんとかここまで逃げ延びることが出来ました」

「あぁ、逃げ延びりゃいい。
 津藩まで、裏切るなんてな。

 だが俺達には大坂城がある
 あそこに行きゃ、弾薬も補充できるだろう。

 本陣へ戻るぞ。
 負傷者で連れて行けそうなものは、連れていく。

 手伝えるものは手を貸せ」


土方さんの言葉に、新選組の隊士たちで動ける人たちは
私たちが手当てをした負傷者たちに、肩を貸しながら移動準備に入る。


「動けるものたちから、本陣へと迎え。
 俺たちは、官軍の動向を抑えながら本陣へと向かう」


そう言うと新選組の主要幹部たちは、再び、本陣とは違う方向へと向かっていく。


「花桜、私たちはここにいる隊士たちを、兵士たちを本陣に連れ帰るよ」

舞の言葉にゆっくりと頷いた。
 

舞の肩にも、上着が掛けられていた。
本陣へと向かう途中も、何度も何度も近くに落ちる砲弾。


砲弾によって焼かれた山火事は、乾燥した空気と重なって勢いを増していく。



「ちゃんと屈んで、口元をおさえて」


現代で教えられたそんな言葉を吐き出しながら、
私たちは本陣を目指す。

本陣を向かうまでにも、せっかくここまで助かってきたのに吹き飛ばされた人もいた。
新たに負傷した人もいた。



「花桜っ!!」
「花桜ちゃん、危ない」



そんな声が聞こえたのと、弾に閃光が走ったのは同時だった。
次の瞬間、風圧に吹き飛ばされた体。


「花桜っ!!」


慌てて駆け寄ってくる舞の声。


起き上がろうと、体を起こしたいのに、
すぐに起き上がれない。

クラクラする頭。そんな私の指先に、生暖かい何かが触れる。
慌てて手を動かして指へと視線を移すと、真っ赤な血がついていた。



「花桜っ!!、いやっ、あっ山崎さん」


山崎さん?丞?
舞の声に慌てて目を開くと、そこには私を助けるように覆いかぶさった丞の姿を確認できた。



「おいっ、大丈夫か?
 山波、加賀」


砲撃の音を聞いて駆け付けてくれたのは、
先ほど別れたばかりの土方さんたち。