「あっ、花桜。
花桜はこっち」
舞に手をひかれるままに私は舞の隣へ腰を下ろした。
あっ、飲物出さなきゃ。
すぐに立ち上がって飲物を準備しようとしたら、
別の人たちが机を囲んでる人たちの前へと飲物を出してすぐに部屋から退室した。
「我らは、石清水八幡宮のある男山を東に、西に淀、東西に布陣。
そこで薩摩のやつらを迎え撃つ」
土方さんのそんな言葉から始まった作戦会議。
今居る橋本には大坂湾から京都に侵入する外国船に備えて、
淀川の左岸である楠葉と右岸の高浜にカノン砲が四門あり、
それを利用して戦うと言うものだった。
作戦会議から二時間後、ようやく日が開け始めた頃、
銃声が轟き始めた。
「花桜、私たちはここで負傷した兵士さんたちを守りましょう」
陣地内に緊張が広がった時、舞は私の手を握る。
腰に下げた沖影に力を貰う様に手を添えると、
私は負傷兵の傍へと駆け寄った。
移動が決まった時にすぐに動かせるように、
荷車や板に乗せれるものは寝かせていく。
一進一退だった戦いも日が高くなったお昼頃に戦況が変わったみたいだった。
対岸から打ち込まれる砲撃。
何発も打ち込まれる衝撃に、私は陣を守る責任者の方へと走りだしていく。
その隣には舞がピタリと寄り添う。
慌ただしく走り回る幕府の人を捕まえて「何があったんですか?」っと
問いかけると、「今、情報を集めておる。戦いに集中しろ。敵の侵入に備えよ」っと
吐き捨てて慌てて何処かへと消えていく。
「花桜、敵が裏切ったのよ。
対岸の高浜砲台を守ってた津藩藤堂家がね」
そう言うと舞は、悔しそうに唇を噛みしめた。
「えっ?また裏切りなの?」
裏切り、裏切り、裏切り。
そんな言葉でしか片づけられない、酷い仕打ち。