戦い始めて四日目。
前夜に届いた将軍からのお言葉に陣地には活気が戻っていた。


どれだけ必死に手当てをしても、負傷者は減ることがない。
戦うたびに銃弾を身に受けて、救護室に担ぎ込まれてくる。


何とか一命をとりとめたもの助けることが出来なかった命。
戦争と言うものの愚かさを強く実感せずにはいられなかった。


「花桜ちゃん、いつも手伝ってくれてありがとうな。
 先生らも助かってるって喜んでたわ」

そう言って、突然姿を現すのは丞。

「丞……帰ってきてたんだ」

「まぁ、またすぐに出掛けるけどな。
 副長に報告に」

「そっか……。
無茶しないで……」



取り留めのない話をして、笑って送り出そうって思ったのに
何故か涙が溢れ出して、私は顔を俯か【うつむか】せる。


そんな私の頬に両手を添えて、ゆっくりと私の顔を持ち上げると次の瞬間、
丞の唇が私の唇に触れた。



抱かれるような形で烝に包まれて過ごした僅かな時間。



「さてっと、わいの充電も完了や。
 何、鳩が豆鉄砲くらったような顔してんねん。

 花桜ちゃんは笑ってる方がえぇ。
 わいは、そんな花桜ちゃんの笑顔に惚れてもたんやなー。

 あの日、わいの頭上に降ってきた時から」



丞は出会いの時間を思い出しながら、クスクスっと笑ってた。


そう……。
あの日、私はお仕事中の丞の頭上に降り注いで邪魔をして助けてもらった。


あの日から丞は、私をずっと支えてくれた。
丞が気にかけてくれたから、はぐれてしまった瑠花とも舞とも再会することが出来た。

居場所のなかったこの世界に、居場所を作ってくれた。