斎藤さんに私がこの先の未来を具体的に告げたことはない。
だけど斎藤さんはもう一人の舞の存在を認識している、数少ない存在。



この世界の幕末で嘉賀舞の存在と、加賀舞の存在をうまく受け止めて認識してくれた貴重な存在。
晋兄と斎藤さん。



斎藤さんとの間には嘉賀舞が愛を紡いだ赤ちゃんが存在してたはず。


だったら……斎藤さんにも、この先の未来が見えてるの?



漠然と湧き上がる疑問。




「どうした?
 舞?」

「斎藤さん……、貴方の前に見えてる舞はどちらの舞ですか?
 貴方は……この先の未来が……」


見えているのですか?



斎藤さんは、その問いに対して深くは語らず……
ただ一言告げた。


「敬里に逢えるとは思わなかった」っと。



その言葉に、私は嘉賀舞の罪を今以上に実感した。




「斎藤さんは……舞の行いを憎んでますか?」


その問いかけに、静かに目を伏せて首を横に振った。



「少し休め。
 体を厭わずして、この先は闘えまい」



そう言って斎藤さん私の体を斎藤さん自身の膝へと誘う形で引き寄せて、
自らも座ったままで、刀を抱きしめたままゆっくりと目を閉じた。




静かに響く寝息を感じながら、
私も斎藤さんに体を預けるようにして目を閉じた。






翌朝、久しぶりに休息感が得られた体を起こして立ち上がる。
外で眠っていたはずの私が、いつの間にか場所を移されて花桜の傍で眠っていた。


傍には斎藤さんの姿はもうない。




戦いは終わらない。
翌朝も、早朝から陣中見舞宜しく、今ある食糧で食事を作ってくばっていく。




花桜にとって再びの試練が目前に迫っていた。