私たちの部隊は、淀から五キロほど後退した橋本へと布陣していた。

戦い開始から三日。
勝機を逃し続け、裏切り行為も多く、隊士たちの指揮は低下していた。



「俺達は金で雇われて集められただけだ。
 幕府の主要型が裏切るんだ。

 徳川に未来はないだろう。
 今夜、抜け出さないか……」



ひそひそと寄せ集めの兵士たちが会話しているのが、
耳に届いてくる。


面と向かって、強く言い出す人なんていない。
だけど心の中じゃ、皆……徳川を見放していた。




……バカみたい……。


そんな兵士たちの気持ちにも、
気づいてる気配なんてない、幕府の主要陣。



ボーっと見つめていたのも馬鹿らしくなって、
目をそらして、空に向かって大きく両手あげて伸びをした。



「舞、見つけた。
 人手が足りないの。

 ちょっと手伝って」


花桜が私を呼びよせる。



誘われるように、花桜が居る救護室へと向かうと、
そこではいつもの別の意味での戦争が繰り広げられていた。



「熱湯はあるか?」

「そこの君、今から弾を抜く。
 体を抑えなさい」



そんな声が部屋の中に響くと、すかさず動ける隊士たちが指示通りに負傷した隊士の体を押さえつけて、
その次に来る処置に備える。

痛そうに顔を歪めて声をあげながら、処置から逃げ出そうと渾身の力を振り絞って体を動かすもの。


処置の中、気を失う様に倒れこむもの。



先の戦いで負傷して、弾をとる処置は終わったものの、高熱にうなされ続けるもの。
救護室で寝ているものは様々だった。