井上さんが亡くなった。
鏡が伝えた映像に私は、その場で崩れ落ちた。


「瑠花さん……」


私のそばに近づいてきた花桜のお祖母さまは、
後ろからそっと肩を抱いてくれた。


「井上さん……、凄く優しかったんです。
 一緒にご飯を作って……」

「えぇ、えぇ知っていますよ。
 花桜も瑠花さんも、舞さんもお世話になっていましたね」



井上さんが亡くなるのは、歴史を学んで知ってる。
ドラマで見て、新選組のことを書いた本で読んで知ってた。


鴨ちゃんの時だって、山南さんの時だって、藤堂さんの時だって、
知ってたんだよ。


知ってたのに、だけどあの頃とは違う感情が私を包み込むのはどうして?





井上さんが壮絶な死を遂げて花桜が山崎さんに引っ張られるように、
逃げ延びたお寺。



お寺には銃弾で吹き飛ばされて負傷した人たちが溢れかえっていて、
花桜はその人たちの手当てに奔走してた。



私も現代に帰ってなくて、
あの場所に居たら……二人と一緒にこんな壮絶な世界で生き抜くことが出来ただろうか?