その後は悲惨だった。
敵を罠にはめて奇襲をかけた一本道には、
大量の兵士たちが恐怖に発狂したように集まって道幅にふさわしくない人が散乱した。
そこへと次々と打ち込まれていく砲弾や銃弾。
戦意を喪失して、次々と新政府軍へと投降していくもの。
負傷して動けなくなるもの。
ずっと青々とした空に翻っていた山南さんの羽織も、今じゃ泥にまみれ砂埃にすすけて、
見られたもんじゃない。
私の血も吸って、散々な状態になってた。
「お前たち、銃に勝とうとは思うな。
あいつらが的【まと】になってる間に身を潜めて進軍しろ。
距離を詰めろ。あいつらの銃にも弱点はある。
勝機は装填時間にある。
無駄死になんてすんじゃねぇぞ。
俺たちは大坂へ。近藤さんの元へと無事に辿り着く」
土方さんの鼓舞が隊士たちを震えたたせる。
皆が絶望を感じ始めているその時も、
新選組だけは……まだ明るい未来を感じようと必死だった。
次々に打ち込まれる砲弾は相変わらずで、
装填の隙をどれだけ掴み取ろうとしても人数と連携に守られた敵は、
私たちの目的を成就させてくれない。
守りたい。
私も皆を守りたい。
ねぇ……山南さん。
今の私に何が出来る?
もっと力が欲しい。
皆を守れる力が……。
守られるばかりの私じゃなくて、皆を守れる力が……。
散々、自問し続けて辿り着いたのは、
戦うことで守れないなら、私に出来る精一杯で返すことしか出来ない。
せめて傷ついた人たちを癒せるように……。
どんなに辛くても、笑っていたい。
皆が元気になってくれるように、皆が笑顔になってくれるように。
そんなことでしか、私は皆を守ることは出来そうにないから。
そうやって自分にずっと言い聞かせて、伏見を出てから走り続けてきたけど、
ずっとお世話になってきた井上さんがその命を落とした。
逃げ遅れた隊士をかばう様に身を挺して新政府軍の前へと飛び出して銃弾の集中砲火をあびた。