だけど……向こうには威力の強い大砲が姿を見せた。
酒樽に土を入れて作った陣地も、米俵を幾つにも重ねて作った陣地も、
弾を防ぐのに何の意味もなさないほどに強力な威力を持つ大砲。
ドンっと一発、また一発と打ち込まれるたびに遅れて、ドカンっと火薬が爆発していく。
そして吹き飛ばされて負傷するもの、体に風穴があくもの……被害は一気に増え続けて形勢逆転。
「山波っ!!」
ふいに腕を引っ張られたと共に、抱きすくめられるように地面へと叩きつけられる。
「副長」
「土方さん」
隊士たちが次々に集まってきて声をかける。
「俺は大丈夫だ。
お前らも、死ぬなよ」
立ち上がった土方さんに引き寄せられるように立ち上がった私は、
今、爆発した場所へと視線を向けた。
「副長、前線より動きがあります。
徳川本陣の指揮官は、淀城へと入場して新政府軍を迎え撃つつもりのようですが……」
何処からともなく姿を見せた山崎さんは、その後の言葉を濁した。
「どうした山崎?」
「淀城は戦に備えはしているものの、少し趣が違う様に感じるのです。
もしかしたら、我々は城への侵入が許されないこともあるかと……」
山崎さんの言葉に土方さんは顔をしかめた。
「老中、稲葉正邦の裏切り?」
何処からともなく姿を見せた、斎藤さんや、原田さんたちが姿を見せる。
「しかし、まだ裏切りが決定的になったわけじゃないだろう。
だが山崎君の偵察が本当であるなら、我々も動き方を考えなければいけないな」
「そうだな。
永倉、お前ならどうする?」
「大坂城。
ここを乗り切って、大坂城まで辿り着くことが出来ればどうだろう?」
「大坂城か?
それには俺も賛成だ。
あそこは鉄壁の城。海には海軍。陸には鉄壁の城。盾も鉾も揃えば勝算は見えるだろうな」
「あぁ、大坂だ。
大坂へと何とか辿り着けば……」
そんな中、徳川から予測していた淀藩が入城を拒んだ旨の知らせが、激しい憤りと共にもたらされた。
「バカみたい……今も昔も、いい加減にしてっ」
舞は私の隣で、吐き出すように呟いた。



