約束の大空 3 ※ 約束の大空1&2の続編。第四幕~(本編全話 完結)

「花桜さん」


私の名を呼ぶ大好きな人。


記憶はなくなってしまっても、
私の世界を共に作ってくれる。



山波敬丞(やまなみ としつぐ)。
お祖父ちゃんによってそう名付けられた大切な存在。

だけど私はちゃんと知ってる。
覚えてる。

目の前にいる敬丞さんは、
幕末の時代でずっと私を守ってくれた山崎丞だって。


「敬丞さん、いつも道場のお掃除有難うございます」
「花桜さんもお疲れさでしょう。
 先日、稽古で足首をひねられた様子ですが……もう宜しいのですか?」


ふと話しかけられた会話で脳内の中、懐かしい口調が再生される。


★

花桜ちゃん、またそんな怪我して……。
見してみぃ。

……はい、おしまい。
もう無茶したあかんでぇ。

★




ふいに木霊した思い出に、涙腺が緩んで涙が零れ落ちる。


「あっ……ごめんなさい。
 こんなはずじゃなかったのに……」

必死に涙を我慢しようとしても、
なかなか溢れ出すものは止まることを知らなくて。


山崎さんは、そんな私の顔をじっと見つめと
そっと手を伸ばす。



「えっ?」


伸ばした手の指先は私の瞼に触れて……。




「……綺麗……。

 でもただ綺麗じゃなくて、
 懐かしい……なる」



ふと呟く山崎さんの言葉。
記憶、戻りかけてる?


淡い期待が過る。



「山崎さん?
 花桜だよ。

 わかる?私、帰って来たんだよ。幕末から」



焦る気持ちからまくしたてるように話してしまったけど、
私の声が届いていたのか、届いていなかったのか、
山崎さんは何事もなかったかのように「すいません。こんなつもりじゃなかったのですが……」っと
私から体の距離をとった。


「……ごめんなさい。
 急に泣き出してしまった私が悪いから。

 今日は、瑠花と敬里と合流する予定なんだけど。
 敬丞さんはどうする?」

「喜んで同行させて頂きます」

「ならっ、出掛ける準備していこうか」



山崎さんにそう告げて私は自分の部屋へと直行して、
着替えを済ませる。