私も舞は、新選組のことを見守ってくれて、
土方さんも親しげに会話をしていた箱館奉行の役職についている
永井さんと共に馬で向かうことになった。


永井さんが乗る馬と、
舞が私を乗せてくれる馬。


いつの間にか乗馬まで出来てる舞に驚きながら、
私は土方さんに逢えるのが嬉しかった。


今は少しでも傍を離れたくないって思ってたから。

山南さんが、
一人にさせたくないって思ってるようにも感じるから。


私たちが土方さんのもとに到着した時、
その場所は賑やかな宴の最中だった。



「おぉ、土方、賑やかにやっておるか」

「これは永井様」


土方さんは永井さんに敬意を払うように、
素早く膝を折ってお辞儀をする。



「よいよい。
 土方」



永井さんはすぐに、
土方さんを立ち上がらせると、
促されるままに輪の中へと入った。


そして土方さんの視線は私と舞の方へと移される。
その目は「何故、ここにいる」と言いたげで。


「土方、二人は総裁の命を受けて此処にいる。
 そう睨むな。

 それより皆の世話を頼めるかな」


永井さんの声に大義名分を得たかのように、
私と舞は隊士たちのお世話の為に動き始める。


永井さんの元にもお酒を届ける。


皆、楽しそうに笑いながら、
その場所で過ごしている隊士たち。


そんな輪を一人、まだ若い隊士を連れて離れていく
土方さんの姿を見かけた。


ついていこうとした私を舞が、ダメと言うように首をふって立ちとどまらせた。



確かあの子は……。


「土方さんが自分の形見を託す少年よ。
 だから花桜は行っちゃダメ。

 歴史を変えてしまっては元も子もないから」



舞はそう言って私に少し強い口調で告げる。


そんな舞に、少し違和感を感じながら、
私たちは再び、宴の給仕を手伝い続けた。



山南さん、皆、笑ってるね。


こんなに辛い戦いの中でも、
こうやって笑ってひと時を過ごせる絆。


なんか……暖かいね。
私はそっと沖影に手を伸ばす。



夜が更けた頃、
土方さんは五稜郭へと戻るための支度をはじめる。

私と舞も土方さんと共にその場所へと戻った。



その後も戦いは続く。

五稜郭に一度、戦況確認のために戻った土方さんはすぐに
激戦となり始めた二股口へと戻る。


16時間以上の攻防戦を繰り広げながらも、
土方さんたちは新政府軍を撤退させたという。


だけど、その知らせから暫くして、
次々と幕府軍の重臣の人たちが箱館から脱出したという報せが届き続ける。





「もう、十分だろう。

 二股軍を指揮する土方陸軍奉行並に伝令を。
 撤退」



榎本さんはそう告げると、
再び私たちにビールを頼んで届けると一気に飲み干した。



暫くすると土方さんは物凄く苛立った様子で、
この場所へと帰って来た。


部屋をノックすることなく榎本さんの部屋へと入っていくのを見つけた私は、
何があったのかと気になりながら、部屋の方へと向かって聞き耳を立てる。


中から何かに誰かがぶつかっているのかガシャンと言う音が響いてきて、
溜まらなくなった私は『失礼します』と重たい部屋の扉を開いた。


そこには榎本さんを殴ったらしい土方さんと、
絨毯の上に倒れこんでいる榎本さん。