「舞っ!!」


開きだしたと同時に飛び出した私。

目の前には約束通り、
ここまで辿り着いてくれた会津で辛い戦いを終えたはずの舞の姿があった。

「花桜っ!!」


舞の真っ赤になった冷たい手を握りしめた後、
お互いの今日までを称えあうように抱き合う私たち。

「早く入れ」


そんな私たちの時間に水を差すように、
土方さんの呆れた声が耳に届く。


頬を膨らませて、舞から離れた後、
土方さんに視線を向け再び、舞に視線を戻した。


「舞、体が冷えすぎだよ。
 ほらっ、早く中へ入って」


体が冷え切ってしまっている舞を私たちが生活している館へと招き入れた。


真っすぐに向かうのは土方さんが手配してくれた私の部屋。

それは土方さんの部屋の隣で、
私が一番自分らしく戻れる場所だった。


着替えを済ませた後は土方さんの部屋へと一緒に出掛けて、
舞は会津での出来事を土方さんへと報告した。


舞の報告を受けて、
何処か土方さんは寂しそうに感じる。

京からずっと一緒に戦ってきた仲間たちが、
一人また一人と、戦いの中で命を落としていった。


そんな現実を思い返していたのか「そうか」っと舞の言葉に
小さく返事するだけだった土方さん。



そんな土方さんが、何故かとても小さく感じてしまって、
私は反射的にあの言葉を言わずには居られなかった。


「土方さん、斎藤さんは大丈夫です。
 ちゃんと生き残って、警察官になってたから」

「警察官?」

「あぁ、京に居た時と同じですよ。
 治安を守るために働いている人たちのことです」





少しでも明るい声で、
これから続く未来の話を……。



ずっと未来の話を語るかどうか悩んで苦しみ続けてきた言葉。


それを何もためらわずに、サラリと口に出来てしまった自分自身のショックはあったけど、
だけど土方さんと時間を共にする中で、土方さん自身が自分の命の使い道をとっくに決めてしまっているように思えて。


近藤局長がそうだったように……。
その時が来たら、皆を安全な場所に残して、出掛けてしまいそうなそんな予感すら感じていて……。


そう思ったら、その覚悟を受け止めて精一杯、
私もその心が少しでも穏やかに過ごせるようにと……、
そんな風に感じた。



土方さんは再び、目の前の地形図に意識を向けて、
心の中、今も心の中で生き続ける新選組の仲間たちとの作戦会議を続けているようで、
私は舞と共に、邪魔をしないようにその部屋を後にした。



再び自室に戻った時、舞は私を真っすぐに見据えながら、

「ねぇ、花桜ずっと黙ってたことがあるの」

っと会話を切り出した。







深刻そうな面持ちの舞とじっくりと向き合うために、
私は暖炉の前にぺたりと座り込んで、
炎の揺らめきを感じながら、ゆっくりと舞と向き直った。






「私ね……この世界に来た時、花桜や瑠花たちと同じ場所には辿り着かなかった。

 花桜と瑠花は京の町で、新選組の皆と出会ったけど、
 私は一人、長州へと辿り着いたの。

 その場所で私を手助けてしてくれたのは、晋兄こと高杉晋作と、義兄……。
 義兄は……久坂玄瑞って名前だと聞き覚えがあるかな?

 晋兄と義兄は出会った私に親切にしてくれたんだけど、
 それには巡りあわせの縁があったの。


 私の記憶の中のもう一人の舞ちゃんの存在があって……」