会津が降伏した。


それはこの旅が始まって、
私の中で舞ちゃんの記憶が戻って役割を感じた時に、
自分の中で決めていた最後の分岐点。


鶴ヶ崎城(若松城)を後にした私は一人で花桜の待つ北へと向かった。



私の中の嘉賀舞ちゃんの記憶。


舞ちゃんは近藤さんの首を取り戻しに斎藤さんと二人で、
京に向かっていた時に、お腹の中に赤ちゃんが居ることを知った。


その後は、斎藤さんとは別行動だった。
だから記憶の中の舞ちゃんは、会津での斎藤さんの戦いを知らない。



近藤さんの誇りを守るために、
私と敬里が旅の途中で出会ったあの村ののあの場所で、
出産までの時間を斎藤さんと離れて過ごした。

そして……その場所で二人の子供を出産して、
赤ちゃんをその家の夫婦に託して、
舞ちゃんは再び、斎藤さんの元を目指した。

だけど、その頃には若松城は開城され、
会津は降伏した後だった。


そして次に舞ちゃんが目指したのが、
新選組の足跡を辿る旅。

旧幕府軍の残兵が海を渡って蝦夷を目指したようだ。


そんな噂話を聞きつけて、
舞ちゃんも箱館・五稜郭を目指していった。


だから北を目指せば、私もちゃんと花桜と再会できるはずなんだ。


舞ちゃんの記憶と同じように仙台を目指した私は、
蝦夷へと向かう商船へと頼み込んで乗り込ませてもらう。


船は荒波の中、出航し私は緊張が走る中、
蝦夷までの船旅を続ける。






ねぇ、敬里。

今頃、花桜は何をしてるかな?
ちゃんと元気に過ごしてると思う?


もうすぐ、花桜に懺悔しなきゃ。

瑠花には謝る機会もないままに、
離れ離れになっちゃったよね。


敬里は全てを受け入れてくれたけど、
花桜はどうなんだろう。


私がこの後、自分で決めている運命を知ったら、
絶対、許してくれなさそうだよね。


だけど……私は自分の決めた道を、
ちゃんとこの足で歩き続けたいって思ってる。



だから花桜が反対したら、
アンナはちゃんと味方になってよね。






そう言って心の中のと敬里へと語りかけながら、
私は船旅の時間、思いふける。





私には舞ちゃんが繋いでくれた晋兄との絆もある。

斎藤さんが舞ちゃんとの違いに気が付きながらも、
ずっと見守り続けてくれた時間がある。


この場所に来てずっと苦しかったけど、
舞ちゃんの記憶に気が付いて、
舞ちゃんの存在を感じるようになって、
私が為すべき役割を重く受け止められるようになった。



物語の要に存在する記憶の中の少女。
嘉賀舞(かが まい)。


私の名と同じ韻を持つ少女。



ねぇ、舞ちゃん……。
もうすぐ、貴方が成し遂げたかった旅の終わりに近づくよ。



これで良かったの?
舞ちゃんは、今は何を感じてる?