土方さんが率いる主力部隊は額兵隊(がくへいたい)と言う、
仙台藩でフランス式訓練を受けた西洋式(銃式)軍隊の兵士たち。


額兵隊と新選組として共に戦ってきた島田さんたちと共に、
再び陸路から松前城を狙うことになる。

そんな土方さんたちの援護をかってでたのは榎本さんだ。



息を潜めるように陸路から松前城を捉えた持ち場へと辿り着いた頃、
土方さんの指示で、海にいる榎本さんたちのへ方へと仲間が合図を送った。


その合図が引き金となって、海から一斉に砲撃が始まり、
松前城下のあちらこちらから、火の手が上がり始める。



「山波」

「私が為すべきことは心得ています」



そう言って、
家宝の沖影へと自然と手を伸ばす。




「あぁ、信頼しているよ。
 見失うなよ」



土方さんはそう言うと、
次から次へと兵士たちへと合図を送っていく。



それでもす戦は思うように進まなかった。

東側の馬坂門から攻めたものの松前軍は門の後方に大砲を置き、
砲撃直前に門を開き、砲撃が終わるとすぐな門を閉じるという作戦で、
私たちが城に入るのを拒み続けた。


「副長、松前城、さすがに難攻不落の城と言われただけはありますね。

 出陣前に、以前から調べていたと言うものに、
 城の見取り図をみせて頂きました」

「島田、その見取り図はあるかっ」


求められるままに、「はい、此処に」っと土方さんの前へ、
懐から取り出した紙を差し出す。


砲撃音と銃声音が響くなか、
土方さんは暫く地図を見つめ続ける。



ふと、何かを感じたように土方さんは動き始めた。



「島田、ここだ。
 松前城、破れたり。

 松前城は、外国船との戦を想定した城だったよな。
 南側の防備は重視されているが、陸に続く北側は守りも薄そうだ。

 皆をこの場所に集めて、そこから城内をおさえこむ」


その後、勢いに乗り続け、松前城は1日で陥落した。



松前藩の者たちは、自らの城の防御力を過信して長期戦を
想定していたのか、すぐに城下町に火を放って逃走を始めた。

勢いのままに残兵を追撃している最中、予想をしないような悲劇が起きた。


海上の江差沖より、土方さんたちの援護をしてくれていた、榎本さん率いる開陽丸が
暴風雨で座礁。

開陽丸を救援しようと出航した、神速丸をも座礁により失うことになる。


榎本さん率いる1部隊が船を離れて、
江差を制圧中の出来事だった。


沈んでいく船を視界に止めた土方さんたちは、開陽丸から逃げ出して陸へ必死に辿り着いた兵士や、
武器・弾薬を運び出して、必死に上陸した兵士たちを見かけてその場所へと合流する。



2つの船が沈んでいくのを松の木に手をつきながら見送る榎本さんと土方さんの寂しそうな姿を時折、
気にかけながらも、私は船から逃げ出してきた兵士たちの世話に追われていた。



松前城陥落の際の火付けにより、城下の3分の2は灰になってしまったが、
大きな損失を出しながらも、松前の戦は終止符を打つことになる。




松前城、江差の占拠の後、松前城へと一度戻り、
その後、各国領事を招いての蝦夷地平定祝賀会を開くため、
五稜郭へと凱旋。


そして蝦夷共和国、箱館政府樹立が宣言された。




束の間の賑わい。

連日連夜、榎本さんたちが祝杯をあげつづけ、
楽しいそうな笑い声がこだます部屋。




だけどその場所に、土方さんの姿は見えない。

何度か榎本さんに言われて、土方さんの部屋へと向かうものの、
いつも土方さんは地図を見つめ続けているようだった。