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土方さんと共に北へ向かった私たちは、
開陽・回天・幡龍・神速・長鯨・鳳凰・大江・折浜と名付けられた
8艦に乗り込み船旅を続け蝦夷地の鷲ノ木(わしのき)沖へと到着した。


真っ白な雪が降り続ける凍てつくような日。
船旅は決して楽なものじゃなくて、豪風雪に揺られすぎて海に落ちて亡くなった人たちも何人もいた。

その真っ白なキャンパスは、榎本さんが思い描いているような『新天地』への理想の扉となるのか、
はたまた出口のわからない不安が入り混じる心の中を見透かすような、
そんな真っ白な世界だった。

約3000人の兵士たちと一緒に上陸した私たちは、
土方さんと大鳥さんと2隊に分かれて、箱館(函館)を目指し始めた。


大鳥さん率いる部隊が内陸側こを進軍したのに対して、
私は土方さんが間道軍総督として率いる部隊と共に、
海岸沿いを通り五稜郭へ向かうこととなった。

土方さんの部隊には、京の時から行動を共にしている島田魁さんたちと共に行動してた。


箱館に向かう途中、川吸峠にて、ここ蝦夷地での最初の戦が始まった。

この場所で命を落とすことになった兵士たちもいたけど、
私たちは未来を切り開くために、雪深い中、進軍するしかなかった。



私の役割はやっぱり、この場所でも変わらなくて、
最前線で戦い続ける兵士さんたちのサポートだった。


っと言っても、刀で斬りあってた時代ではなくて、
お互いに西洋式銃が大活躍する戦。


銃声が静けさを切り裂くように響く続ける。


「山波、敵は全て殺した。
 負傷兵を応急処置をしてやってくれ。

 処置が終わったら箱館まで急ぐぞ」

 
険しい戦と言うよりは厳しすぎる寒さとの闘いと言えるようで、
兵士たちが銃を持つ指は悴み(かじかみ)、しもやけ状態。

負傷兵の手当に奔走する私の指先も凍てつく寒さに感覚が麻痺して、
思うように動かせないでいた。

なんとか両手をこすり合わせながらも温めて、
処置を終えると、また慣れない道を進軍していく。


箱館、五稜郭を占領した後も戦は続く。



「これより松前城を落とす」


榎本さんの一言で、
それぞれが持ち場へとついていく。



箱館・五稜郭を拠点にして、旧幕府軍に連なる私たちの新たな戦いが始まった。


潮風が吹き抜ける度に体感がぐっと下がっていく凍えそうな場所。


だけど、この場所が土方さんたちにとっての最後の希望だって言うのは、
歴史に詳しくない私でも知ってる知識だから。