「舞さん、お疲れのところすいません。
手伝っていただけませんか?」
この場所に斎藤さんと共に来て、
何度か会話が出来る程度になった会津の女の一人が、
私のところに話しかけてきた。
「はいっ」
慌てて私は手紙を折りたたんで、懐へと片づける。
「今、使いの方が伝令にいらして、
会津は城での籠城戦を決断されました。
皆さま、一斉に城に戻って来られます。
女たちはお迎えの支度に慌ただしくなっています。
舞さんもお願いできますか?」
「わかりました。
私に手伝えることは、何でもします」
手短に答えると私はその女の人と慌てて、
集まっている場所へと合流した。
「腹が減っては戦は出来ぬ。
次々と玄米ご飯が炊きあがります。
お戻りになられた皆様に食べて頂けるように、
沢山、おむすび作ってくださいね」
「はい」
「あと、負傷して戻って来られる方を手当てできるように、
清潔な布と熱湯を用意してください」
「私が致します」
司令塔の人が次から次へと指示を出すと、
それに呼応するように、指名される間もなく、
会津の女たちは自ら意思表示をして作業をこなしていく。
「舞さん、あなたもこちらで一緒におむすびを」
私を呼びに来た時尾と呼ばれていたその人と共に、
私も少しずつ掌にのせては、あつい玄米ご飯を握っていく。
「あらっ、握りすぎよ。
ご飯が硬くなってしまうわ」
考え事をしながら握っていた私は、
つい力が入ってしまったのか硬いおむすびになってしまっていた。
おむすびなんて、ずっと適当に握ってたら完成すると思ってた。
「ほらっ、こうやって」
その人は軽い握り方で手早く仕上げていく。
ガチガチに潰された私のおにぎりとの仕上がりの違いは言うまでもない。
「ほらっ、今度は一緒に」
声に誘導されるように私は、時尾さんと一緒におにぎりを作る。
「さっ、今度はちゃんと作れましたねー。
この調子で、続けましょう」
げんまいおむすびを作り続けている間に、
周囲が騒々しくなってきた。