「ママ……」

「まぁ、瑠花ちゃん。
 いくら疲れてしまってるからって、制服で寝ちゃだめよ。

 ほらっ、しわしわになってる」

「えっと……あの……、長い間ごめんなさい。
居なくなって……」


ずっと私、家族に心配かけて悪い子だった。

長い間、幕末に居ましたって言っても誰が信じてくれるだろう?


「あらっ、瑠花ちゃん。
 おかしな夢でも見ていたの?

 瑠花ちゃんはずっと家に居ましたよ。
 えぇ、居ましたとも」



そう言うと心配そうに、額にママの手が伸びてくる。



「熱はないわね……。

 朝ご飯の用意は出来てるわよ。
 ほらっ、下に降りていらっしゃい。

 体調が悪いならパパに連絡しておくからパパの病院に行くのよ」


そう言ってママは先に私の部屋を出て、一階へと降りて行った。



改めて部屋の壁をぐるりと見渡す。
カレンダーは、あの全国大会のあった八月のまま。


あっ、テレビ……。
慌ててリモコンを探してテレビをつけて同時に、相棒のノートパソコンを立ち上げた。


パソコンに映し出された日付を見て私は唖然とする。
その日付が映し出しているのは、あの私たちが幕末に旅立った全国大会の翌日でしかないのだから。



へなへなと腰が抜けていくのを感じて、私は絨毯の上に座り込んだ。





はははっ、まだ一日しかたってないんだ。
私、パパとママに心配かけてなかったんだ。

おかしなこと言っちゃったなぁー。



そう思う気持ちと同時に湧き上がってくるのは、
私が経験したあの時間は、嘘偽りない現実だったと言うこと。


あの心の痛みは体験しないと刻まれない。



鴨ちゃんとの時間も、総司との時間も……嘘なんかじゃない。