「目を背けようとしなかったとかそう言うのじゃなくて、
ただ必死だっただけです。
目を背けようしなかったじゃなくて、目を背けることが出来なかったんです。
ただ必死に、現実を受け止め続けるのに必死でした。
月の世界って言うのもおかしいんだけど、
私や瑠花、舞が暮らしていた時代の日本は、犯罪とかは確かに減ってはないけど、
戦争はしてないんですよ。自分の国では。
だから刀や銃を勝手に許可なく所持してたら、銃刀法違反って言う罪にとわれちゃうそんな時代。
自分の国では平和だけど、広い世界に目を向けてしまったら戦争はたえなくて、
砲弾よりもっと威力の強い戦道具で戦争してる。
でも自分たちが住んでいる世界は平和だから、そんな『戦争』って言う危機感はないの。
だから私たち、凄くぬるい世界で生きながら、必死に生きてたふりをしてたんだなーって。
だから、この世界に来てたから、私は本当の意味で『生きる』って言うことを教えて貰ってる」
そう……辛いことが多かったけど、
その辛さを一歩ずつ乗り越えられた時、生きている満足感が私にはあった。
あのまま現実の向こうの世界に居たら、私は流されるように毎日の日常を繰り返して、
退屈な毎日を文句言いながら、必死に生きているフリをしていただけにも感じられるから。
「そうか……山波は強いな。
そう言う芯の強さってのは、山南さん譲りなのかも知んねぇな。
俺たちのこの先の未来はどうなる?」
ふと小さく、空を見上げながら紡がれた言葉。
私もゆっくりと空を見上げる。
そんな私と土方さんの間を風が駆け抜けていく。
風にたなびく髪。
「この先の未来……」
何を話していいのかわからないまま、
思い浮かぶ記憶を脳内でまとめながら、
話し始めた私の言葉を「いやっ、いい」っと
再びたった土方さんの声。
「俺としたことが何を弱気になってたんだろうな。
忘れてくれ。
それで、山波、お前はどうしたいんだ?
俺と来るのか?加賀と共に行動するのか?」
真剣に私に視線を向けて問い直す土方さん。
私はその視線を真っすぐにとらえて、「一緒に連れて行ってください」
っと言い切った。