「おはようございます。
 岩倉です」

「あぁ、おはよう。
 何時もすまないね」



そう言って私を迎え入れてくれるのは、花桜のお祖父ちゃん。


「花桜は?」

「まだ鳥羽伏見の戦いじゃな。
 これから新選組は負け戦が続くなぁ」


そう言いながら、お祖父さんは真っ青な空を見上げる。
そんなお祖父さんにつられるように、私も空を見上げた。



空は続いてる。
あの時代の空も、私が居る世界の空も。




「さて、瑠花ちゃん中へ入ろうか。
 ばーさんが待っておるでの」


お祖父さんに誘われるように、
本宅を通り抜けて別棟の部屋へと入室する。



「おはようございます。
 今日も押しかけてしまってすいません」


「おはようございます、瑠花さん。
 今日も花桜と敬里を心配してくれて有難うね」



そう言うと、幕末の景色を映し出す不思議な手鏡を私の方へと向けた。




鏡の中ではまるでドラマのワンシーンのように、
土方さんが刀を振るって戦い続けてる。



その土方さんの傍にチラリと時折映し出されるのは、
聖フローシアの制服に新選組の羽織を纏って刀を振るい続ける花桜。


直後、花桜の背後から斬りかかろうとする敵らしき人影を見つける。
だけど花桜は気づいている素振りもなくて。



「花桜っ、後ろ。危ない」



私は思わず大声で鏡に向かって声をかけてしまう。


だけど……私は現代で花桜は幕末。
私の声が届くはずなんてない。



結局、花桜を守るように切り込んだ土方さんによって負傷せずに済んだものの、
正直、鏡を見続けるのもキツイ。