どれだけ覚悟、覚悟って言葉にしてても、
そんな覚悟なんて出来てなかった。



このまま舞や花桜も、この戦いで倒れてしまったら……。



そんなことを考えてしまう自分すら居て、
体が自分の意志とは関係なく震えてしまって、
落ち着いてくれない。



「瑠花、しっかりしなさい。
 ママには今日、花桜さんの家で泊まることを伝えておく。

 こんな時だからこそ、
 現代にいる瑠花にしかできないことが今はあるだろう。

 瑠花は何もできないんじゃない。
 いっぱい苦しんで、自分自身をせめて、
 それでも背けたい目を背けずに、向き合っているだろう。

 そんな瑠花をパパは信じているから。
 今は瑠花が為すべきことを精一杯、後悔のないようにやり遂げなさい。

 パパはいつも瑠花の傍にいるよ。
 パパがついてる。
 
 瑠花の心が壊れそうになったら、その時は必ずパパに教えておくれ。
 パパが瑠花を守るから。

 さぁ、勇気を出して瑠花の戦いを続けなさい」



そう諭すように背中を押してくれるパパ。

パパとの電話を切った後、
震え続ける体を震えさせたまま気にしないように意識して、
鏡の方へと視線を向ける。



鏡の中てば、
ようやく斎藤さんや舞たちが味方の陣へと到着した様子が映し出されていた。



安堵する想いと共に溜息が零れだす。


鏡は負傷兵の手当を必死に続ける花桜を映し出す。


「花桜っ。
 何してるの、ほら。知らない人の手当じゃなくて、
 早く、敬里と舞の方へ。

 今だったら、まだ助かるかもしれないでしょ」



鏡の前で呟く私の声は、
受け止めるものがないままに部屋の片隅へと吸い込まれていく。




「瑠花さん……。
 ずっと、孫たちを見守ってくれていたんだな」


そう言いながら、お祖父さまが私の傍へと近づいて来た。



「今、敬里と舞は斎藤さんと一緒に、味方の陣地へ戻りました。

 今日は泊まらせてください。
 パパには許可を頂きました。

 ご迷惑かもしれませんが、こんな状態のまま、私だけ家に帰ってベッドで眠るなんて
 到底できません」


その場で正座をして畳に頭を擦り付けるようにお願いする。