信じているから大丈夫。
祈っているから大丈夫。

また会えるから大丈夫。


だって私たちは現代から幕末に行ったんだもん。
私が無事に帰って来れたんだから、
今幕末にいる花桜も総司と入れ替わりに行っちゃった敬里も、
ちゃんとまた此処でいつものように会える。


また私たちにとって、当たり前の日常が来るんだ。

今はこうして総司が私の傍に敬里としていてくれるけど……、
これは何時か終わってしまう歪んだ歴史なんだ。


こっちに戻ってきてから、
日々の生活を過ごしながら、そんな風に感じていた。


そんな私の甘い考えが、その日……砕け散った。



いつものように学校の授業が終わった後、
花桜の家へと急いで、いつものように鏡を見つめていた。



鏡が映し出すのは相変わらず目を閉じたくなるような、
銃撃戦や命の削りあいばかり。

砲弾が撃ち込まれて破裂する瞬間の映像や、
その破裂によって吹き飛ばされる人たちの体。


それは紛れもなく、あの幕末を精一杯生き続けた人たちの
決死の姿、生きた証。

だけど……何処か私にとっては近くて遠い感覚。



私もあの場所に実際に居て、総司や鴨ちゃん、お梅さんと出会って、
必死に必死に生き延びて、この世界に帰ってきた。


なのに……その事実は確かにここにまだ残っているのに、
なんていうのか、感覚が少しずつ薄れて零れ落ちていく。

何かの中に溶け込んでいくような感覚が私を包み込んで、
何処か鏡の中の出来事を一線があるように感覚が包み込んで……。



だからなのかな……。


敬里が舞をかばって銃弾で貫かれて崩れるように地面へと倒れこむ映像が、
どこかスローモーションで映画の中の出来事のように映ってしまった。