現代に戻ったあの日から私は夏休みの間ずっと花桜と敬里が暮らしていた家と、
総司が敬里として入院している病院へと通う日々を続けてた。



「瑠花ちゃん、今日も花桜ちゃんのところに行くの?」

「うん。
 なかなか家のこと手伝えなくてごめんなさい」

「家のことはママがするからいいのよ。
 でも瑠花ちゃんも受験を控えているでしょ」

「受験って、私はまだ高校二年生だよ」

「一年なんてあっという間にすぎるわよ。
 だから……」

「勉強しなさいって言うんでしょ」



そう……決まってママが続ける言葉は、
パパみたいな立派なお医者さんになりなさいって。

そう言われ続けて今まで歩いてきたけど、
私の心は、そっちの方面に歩いていきたいなんてずっと思えなかった。 


でも今は少しだけ将来のことを真剣に見つめられるようになってきた。 



幕末にワープして鴨ちゃんと出逢って、
新選組の人たちと出逢って……総司の本当の優しさを気づかされた。


私を守ろうと必死になって前線へ踏み出そうと食いしばり続けてくれた花桜。



幕末で出会った大切な人たちが負傷するたびに、
何もできない私自身が歯がゆかった。


だからパパにもママにも伝えられてないけど、
今からでも医学部を目指したいって思う気持ちは芽生えてる。


医学部を目指すには遅すぎるかもしれないけど、
自分の未来をしっかりと大地を踏みしめて突き進みたい。


信じる道を真っすぐに歩き続ける大切さを、
貴重な経験の中で教えてもらったから。



だけど…今、私がしなきゃいけないことは勉強だけじゃない。

ちゃんと現代に親友たちが帰ってこれるように少しでも幕末で今も精一杯生き続けてる花桜と舞、
総司と入れ替わりに旅立ってしまった敬里を感じていたい。



後は総司がこの世界に馴染めるように……。




「じゃ、行ってきます。
 将来のことは私なりにちゃんと考えてるつもりだから」



黙って朝食の洗い物をしているママに向かって告げると、
鞄を手にして花桜の家へと向かった。


日本家屋の前に立つと、何時ものようにチャイムを鳴らして私はドアが開くのを待ち続ける。