そして悪い予感が脳裏によぎる。
舞が生きているのに、生きることを手放したように気落ちして見えたこと。
私が声をかけているのに、視点が定まっていない現実。
慌ててアイツの姿を探すように私は陣地内を探しまわる。
そして私は見つけた……。
舞が傍にいる、莚(むしろ)をかけられた存在を……。
「舞?舞?どうしたの?」
その場に座り込む舞の肩を掴んで、
揺さぶるように声をかける。
私が何度、ゆすっても舞は反応しない。
ただ……何処か、一点だけを見つめているようで。
私は地面に寝転んでいる莚を片っ端から取っ払うように、
手に取っていく。
そんな私の態度に『何をしている』っと慌てて窘めに来る隊士たち。
そして人が集まりだした頃、
沢山の戦死した亡骸の中にアイツの姿を見つけた。
「……えっ……嘘……」
体の力が抜けていく感覚と共に、
その場へと座り込んでしまう私。
「……敬里……」
名前を呟いたものの、まだ現実味なんて何処にもなくて、
私は慌てて体を引きづるようにアイツの方へと辿り着くと、
横たわったままのアイツの肩に手をかけて、ゆっさゆっさとゆする。
だけどアイツの目は開くことはなくて……。
視界が次から次へとにじんでぼやけていく。
どうして?
なんで?
命の取り合いだってわかってたはずなのに、
現実を受け止めていたはずなのに、
今のこの現実が受け止めきれないでいる。
「バカっ!!
何寝てんのよ、ちゃんと目を開けなさいよ。
開けて、また私の前でバカやりなさいよ。
敬里……。
おじいちゃんとおばあちゃんを泣かせるなんて、
悲しませるなんて私許さないんだから……」
悲しみなのか怒りなのかわからない感情が、
私を包み込んで、どうしようもなく苛立たせる。
行き場のない怒りも悲しみも、
バカにしかぶつける先が見つけられなくて……。
「山波っ!!」
そんな暴れ続ける私を斎藤さんの声が制した。
「山波、やめろ。
少し、頭を冷やせ」
そのまま冷水を浴びせられた私は、
その場に立ち尽くすように、動けなくなった。
体が震えてコントロールが効かない。
ねぇ・・・・・・、
どうしたらいいの?
震えていく体を両手でぎゅっと抱きしめるように、
私は敬里の亡骸にを真っすぐに見据えながら、
唇をかみしめた。