そのまま硬直した私と舞が再び意識を自覚した時、
それは新政府軍の大砲による砲撃が届いた瞬間だった。
砲撃の衝撃で慌てて目を覚ますと、
私と舞は、何処かの部屋で休まされていた。
「山波、加賀、動けるか。
この場所も危ない。
十六橋が突破されたとの連絡がきた。
土方さんは、滝沢本陣へと向かう。
俺たちは滝沢の地で副長と合流する」
斎藤さんの言葉に私たちは再び、
動き出すしかなかった。
時間は止まっちゃくれない。
アイツが終(つい)えた時、
私たちは改めて、この戦の惨さを思い知った。
この場所を離れる時、
もう一度……一瞬だけアイツと向き合いたくてその場所へと向かう。
確か、この場所。
土気色をしたアイツの顔を脳裏に焼き付ける。
少し冷静になって見つめたアイツの顔は、
どこか満足そうに見えた。
……バイバイ……
小さく、アイツに声をかけて、
私は吹っ切るように戦場へと戻った。
その後、私たちは山の中を三時間ちょいの道程を、
動ける負傷兵たちを連れて滝沢本陣の地まで向かうことになる。
そこでもう一度、
土方さんと合流することができた。
秋の肌寒さが、冬の厳しさを運んでくる。
それは更なる、
この戦の厳しさを物語っているようで……、
私はこれまでに何度も何度も引き締めてきたはずの身を、
改めて引き締めようと、自分自身に自己暗示をかけるように言い聞かせた。
今は、何も考えず……生きることだけを考えよう。
生きて、私の世界へ無事に帰ることを、
私自身の為すべきことをやり遂げて……。



