「敬里……」


その日、私は嘉賀舞ちゃんと言う前世の記憶の存在。
嘉賀舞ちゃんと斎藤さんの時間の物語。

敬里の出生の秘密がその二人にあること。

二人から始まった、
その運命の流転へと巻き込んでしまったこと。
 

そのことをずっと負い目に感じ続けている私自身の感情。


そんなものを全て、
気が付いたら吐き出してしまっていた。



……こんな運命、私だって背負いたくなかった……。



どうして私が、
嘉賀舞ちゃんの記憶を持って生まれてしまったの?



どうしようもない思いが溢れ出しては、
涙となって零れ落ちていく。



だけど……舞ちゃんの記憶を持つ私だからこそ、
本当の今の私を受け止めてくれた、晋兄にも出会えた。



苦しかったけど、苦しかったことばかりじゃなくて、
ちゃんと嬉しかったこともあった。



だけど……。





ずっと声を殺して涙を流し続ける私を、
敬里は優しく包み込んで耳元で囁いた。