花桜たちと共に福良本陣へと向かい、
久しぶりに斎藤さんと再会した。

「斎藤さん、ご無事で何よりです」

「加賀も大役を果たしてくれたんだな。
 今、副長からその旨を聞いた。
 敬里、お前も長旅ご苦労だったな」


斎藤さんは私たちの姿を見かけたと同時に、
労いの言葉をかけてくれる。


「斎藤さん、お怪我を……」

「あぁ、これかっ」


そう言って腕の傷の方へと視線を向ける。


戦の凄さを物語るように新品だった洋装は、
どこもここも汚れと破れだらけで首筋などは皮脂の汚れも、
こびりついてる。


そんな斎藤さんの衣類に視線を向けながら、
きっと私もそうなんだろうなーっなんて思った。

そんなことを気にかける余裕なんてないほどに、
皆、戦にこの先の未来を託してる。

自分の誠を掲げながら。

「傷はたいしたことない。
 
 少し、砲撃の際に弾かれた石が頬を掠めたのと、
 弾が掠ったくらいだ」


薄汚れた包帯の下は、掠っただけとはいえ銃創なんだ。


「加賀、敬里、我ら新選組は明日にでも母成峠へと向かう。
 お前たち二人は、副長や山波と共に行動をしても構わない」

そう言う斎藤さんの言葉に私は、首を横に振った。


「私は斎藤さんと共に行きます。
 出発は明日ですね。支度しておきます」

「敬里、お前は?」

「舞が行くなら俺も行く。
 行っていいよな、斎藤さん」

「好きにしろ。
 明日、共に出立するなら、今から軽い軍事訓練がある。

 やるなら顔を出せ」


そう言うと、斎藤さんはすぐに慌ただしそうに私たちの前から姿を消した。


「こんな時でも訓練なんだな。
 この時代の人たちは」


そう言って敬里は今も怪我人たちでごった返す部屋へと視線を向ける。