睡眠不足が続く毎日。
それでも朝はやってきて、私の日常が始まる。
いつものように体を起こして制服に袖を通すと、
一階のリビングへと向かう。
「おはよう、パパ。おはよう、ママ」
声をかけてテーブルの前に座った途端、
パパがゆっくりと立ち上がって私の方へと近づいてくる。
「瑠花、少しいいかい?」
そう言って手慣れた手つきで瞼を下げて、
そのまま額へと手が伸び最後に手首へと触れる。
「まぁ、貴方、瑠花ちゃん加減でも悪いの?」
パパの雰囲気から察したママはすぐに、
家事の手を止めて私の方へと近づいてきた。
「大丈夫だよ。
ちょっと昨日、夢見が悪かったの。
だから、寝不足なだけだから」
そう言って空元気を装ってみるもののパパの視線は、
真っすぐに私を捉えてて見逃してくれそうにない。
「瑠花、今日は学校休みなさい。
パパも勤務時間を少し調整して貰うことにするよ」
パパのそんな言葉から切り出された話題は、
やがて家族会議のような形で、重苦しい空気がその場を包み込んだ。
「瑠花、前回、山波さんの家に迎えに行った帰り道で、
パパは瑠花に話したね。
夏休み頃から、瑠花の様子がおかしくなったのは気づいているって。
それはパパもママも気が付いていたけど、
いつかは話してくれるだろうってそう思って時が満ちてくれるのを待っていたんだけど、
瑠花は何時まで待っても話してくれない。
この間、瑠花の昔のアルバムをパパは見ていてね、一つだけ気が付いたことがあるんだ。
山波花桜ちゃん。
瑠花の友達には、確かに敬里君という従兄弟がいたね。
瑠花が今の家に引っ越す前、山波さんと同じ町内に居た時にオリエンテーションがあったのを覚えているかい?」
パパの言葉に、私は小さく頷く。
「あの時のアルバムを見ていて、パパが気が付いたんだ。
敬里君と一緒に。
アルバムにはそう書かれている敬里君と、今の敬里君は同じ人なのかな?って。
現実に考えたらありえないことなんだよ。
医学的にも疑いだしたらキリがない。
だけど……パパの直感が、違和感を告げるんだ。
その辺りにも、瑠花が苦しんでいる理由があるんじゃないかって」
そう言って切り出されたパパの言葉に、私は絶句する。
今の敬里は敬里じゃないよ。
幕末から一緒に来た、沖田総司なんだよ。
そう言ったところで、信じて貰えるなんてわかんない。
だけど……最初から決めつけてしまったら、
それこそダメなのかな。
花桜の戦が幕末で精一杯生き抜くことだったら、
私の戦は今この時間をちゃんと逃げずに受け止めて貰うことになるのかな?