「ご苦労。
引き続き報せが入ったらまた教えてくれ」
そう言いながら土方さんは眉間に皺を寄せながら、
目の前に開かれた地図へと視線を向ける。
「土方さん、戦況もあまりに良くないみたいですね」
そう言って傍へと進み出ると、
土方さんの傷口を確認して薬草を塗り、
再び布を巻いて傷口を保護する。
「山波、いつもすまない」
「謝ることなんてないですよ。
私は私が今出来ることをやってるだけです。
謝るくらいなら有難うのほうが嬉しいです」
「そうか……そう言うものなのか……」
そう言って黙り込んだ土方さんは再び地図のほうへと視線を向けた。
地図の上には、小さな木々が、布陣の形に並べられていて、
報せが入るたびに、僅かにその場所が移動している。
私は傷口の手当を終えると道具を片づけ、
再び土方さんのもとへと戻った。
京に来る前の私だったら、確実に目を背けたくなるような銃創。
だけど……この傷と撃たれて間もない時間から向き合ってきている私は、
少しずつだけど、確実に回復しているのはわかる。
この傷が良くなると、再び戦地の中へと身を投じていくのがわかりながらも、
土方さんの苦悩を想像すれば今は一日も早い回復と、
戦への復帰のために最善を尽くすのが私の役割だと言い聞かせる。
私の中での矛盾や葛藤を押し殺したまま。
歴史に疎い私だって、会津戦争が負け戦だってことは知ってる。
土方さんが箱館まで移動することも。
そして……その場所で銃に撃たれて倒れることも。
その時期がいつかなんて具体的にはわからないけど、
主な出来事になりうる事件だってことは知ってる。



