花桜のいない二学期が始まって
秋の実力試験が終わった11月中頃。


今も花桜と舞はあの時代の住人で、
私の不安は尽きることがない。


憧れ続けたあの時代が、
紙に綴られた、映像で見るだけの世界ではないということを
思い知らされたから……。


「はいっ。皆さん、先日の実力テストお疲れ様でございました。
 各教科の担当シスターより預かってまいりました、答案用紙をお返しします。
 名前を呼ばれたら私のところまで取りに来てください」

そういって担任のシスターは、順番に名前を読んでいく。

「岩倉瑠花」

私の名前が聞こえたと同時に、
席から立ち上がって私はシスターのもとへと戻った。


「岩倉さん、何かありましたか?
 前回の二学期の中間試験といい今回といい成績が落ちていますね。
 悩んでいることがあるのでしたら、何時でも相談に乗りますよ」

そういって私に声をかけて答案用紙を返すシスター。


それもそのはず……。

二学期に入ってからの中間テストと今回の実力テストは、
正直、心がテストに向けられなくていつもは片手の枠におさまる私の成績が、
散々なものだと想像できるのは試験を受けた時からわかってた。


親友が幕末にいるから……。
そんなことを言っても、一般的には理解されない不安ごと。



「有難うございます。

 私、個人的な悩み事ですので今しばらく、そっとしていただけましたら幸いです。
 シスターのお心遣いに感謝します」


そういってお辞儀をすると、いつも殆ど満点で苦手な教科ですら90点以上だった成績から崩れ落ちた、
答案用紙に視線を向けてため息を一つ吐き出す。


良い大学に行くには試験の成績も大切だってことは私だって知ってる。
だけど……勉強は何時でも取り戻せるけど、親友は勉強と比べられる存在じゃない。
今はそう思うから……。


その後も授業に集中できるはずもなく、私は放課後になると何時ものように学院を飛び出して、
図書館へと駆け込んだ。


図書館の一角。

歴史スペース近くのテーブルと椅子をいつもの特等席にして、
鞄を置くと本棚の前へと立つ。



えっと、今……花桜たちが居る時間は、
近藤さんが斬首された後で……土方さんが足を宇都宮で撃たれて……。