大坂に旅立つ前の総司。
それはもう、本当の沖田さんじゃなくて、敬里に違いないと思ったから。



「あのバカっ、私たちが悩んでなかなか告げることが出来なかった未来を
 いとも簡単に口走って。

 次にあったら、一発殴ってやるんだから」


そう言いながらも、敬里は敬里なりに守ろうとしたのかも知れないと思えた。



「土方さん、いろいろ気にかけてくださって有難うございます。
 だけど私は山南さんの想いを抱いて一緒に戦います。

 この世界で守りたい大切なものが出来たから。
 よそ者の私じゃなくて、私も新選組に身を寄せる仲間の一人だと勝手に思ってますから」


そう、まっ直ぐに土方さんの目を捉えて、自分の想いを告げた。


「副長、私の想いも花桜と変わりません。
 私も自分の意志で戦います」


私の隣で、舞も言い切る。


そんな二人の決意を受け止めて、
土方さんは暫く黙った後、「しゃーねぇーな。じゃじゃ馬が、言うこと聞く玉じゃねぇのは昔っからだな」なんて
言いながら次の瞬間、真剣な面持ちで告げた。


「山波花桜、お前は俺と共に来い。
 加賀舞、お前は斎藤の隊へ入れ。
 
 何時、戦が始まってもおかしくないほど事態は緊迫している。
 すぐに準備にかかれ」

そう言って同行を許してくれた土方さんにお礼をして、私たちは自分たちの部屋へと戻る。
部屋に戻ると私は手荷物の中から、ここ数年は袖を通すことをしていなかった聖フローシアの制服を取り出す。


「花桜、それ……」

「うん。学校の制服。
 暫くは目立つからずっと着物を借りてたけど、
 戦いになるなら、制服に山南さんから託された羽織かな?って」


そう言って私は晒を何重にも巻いた上から制服のブラウスに袖を通して、
スカートとジャケットを身に着ける。


「じゃ私も……。
 花桜が制服を着るなら、私も制服で戦おうかな。

 多分、着物より身動きとりやすいよね」


そんなのりで、サバサバっと自分の手荷物から制服を取り出した舞も同じように着替えを済ませた。




すると神出鬼没の丞が私たちの部屋の前へと障子越しに姿を見せる。


「花桜ちゃん」

その声に慌てて障子を開ける。


「その恰好、懐かしいなぁー」

「でしょー。
 丞、私、行くから。
 土方さんにもちゃんと許可を貰ったから。

 山南さんの羽織をまとって、私も一緒に戦うから」


丞に止められる前に、先に切り出す。
すると次の瞬間、丞の体が優しく私を包み込む。



「大丈夫や。
 花桜ちゃんのことは、何処におってもオレが元の世界に帰したる。
 オレが守るから……」


そんな囁きと共に、柔らかな口づけが唇へと降り注いだ。



「花桜ちゃん、舞ちゃん。
 竜雲寺山に布陣した敵部隊の砲口がここを狙っとる。

 二人とも無理しなや」


そう言うと烝は、また素早く何処かへといってしまった。
思わず暖かい口づけが触れた口元に自身の手を伸ばす。