斎藤さんに頼まれて、
私と敬里の近藤さんを探す旅は始まった。


今市を離れた私たちは、徒歩で京を目指した。


私の着物の帯板の裏には、
斎藤さんから預かった大切な手紙が入ってる。


帯越しに、そっと手を当てながら……。
遠い昔の記憶を放り起こす。






『舞、もう少し先を急いでもいいか?』


私を気遣いながら、先を急ぐ優しい声音。

『はいっ。
 私は大丈夫です。

 今は少しでも早く、三条河原へ』







そう、遠い……もう一人の舞ちゃんの記憶。
そして私は体調を崩してしまった……あの時。

腹痛と共に動けなくなった私は、
三条河原へと急ぐ斎藤さんの手を煩わせた。


旅路の途中、私はとある村の農家へと預けられて、
その場所でお医者様の世話を受けることになった。


斎藤さん一人でその後は、
重大任務を終えて……帰路で合流する形になったあの歴史。




だけど今は違う。

あの時と違って私は一人。
今度こそ、あの時に成しえなかった任務を全うしてみせる。




そう何度も何度も自分自身に言い聞かせながら、
先を急ぐ。