私はただ静かに頷いた。
お茶を飲み干して、お辞儀をすると私は再び階段をのぼって総司の部屋の前へと正座した。


その後も時間だけは進んでいく。
一時間、二時間と……腕時計に視線を向けるたびに時間だけが過ぎていく。


信じていないわけじゃない。
信じたくないわけじゃない。

だけどその部屋の扉が開くまで、不安が消えることはなくて、
ただ待ち続けるための私の葛藤も鎮まることはない。



さらに時間が過ぎて何度目かの正座の痺れを感じ始めた時、
その時は静かにやってきた。


ゆっくりと内側から開かれた扉。
そして中からは着物姿ではなく、洋服に身を包んだ総司が姿を見せた。



「総司っ!!バカっ。何してるの?
 お祖父さまたちを心配させてはダメでしょ」


勢いよく言葉を告げて立ち上がりながら抱き着く。

私も心配したんだから……。
その言葉に続けたかった言葉を飲み込んで。


「瑠花……」


総司は私の体をぎゅっと抱きしめてくれる。
こんな風に抱きしめてくれる総司は久しぶりな気がする。


私の声を聞いたからか、階下から足音が近づいてくる。




「お祖父さま、お祖母さま、ご心配おかけしました」


二人の姿を見た途端に抱き寄せていた私の体を引き離して、
二人に視線を向けながら、ゆっくりと頭を下げる。



あれっ?

お祖父さま?
お祖母さま?


総司がそうやって二人を呼んだことって、初めてかもしれない。


お祖父さまと、お祖母さまもそんな総司の変化に気が付いたのか、
お互いの顔を見合わせて、ゆっくりと微笑んだ。



「敬里、お腹がすいたでしょー。
 胃に優しいものを作りましょうね」


そう言いながら、お祖母さまは階下へと戻っていく。


「敬里、瑠花さん、お昼にしようか」


そう言ってお祖父さんも下へと戻っていった。