近藤さんの死を見届けた総司は、
あの後、自分以外の人を閉ざすかのようにゆっくりと立ち上がると、
与えられた自室へと戻って、静かにドアが閉じられた。

学校が三連休をいいことに毎日、この場所へ通い続けた私。

だけど……総司の部屋のドアが開くことも、
花桜のお祖母さまが用意してくれた、朝・昼・夜の食事が手を付けられることもなかった。



ドアを開けて総司の様子を確認したい。
そんな衝動にかられて、部屋の襖に手をかけようとするたびに、
その部屋を見守るように時折、視線を向け続けるお祖父さまの視線によって妨げられた。


お祖父さまは、私をそっと手招きする。


奥の部屋が気になりながらも、私は後ろ髪惹かれる想いでお祖父さまの元へと歩んだ。




「まぁまぁ、開かずの扉はまだ開きませんか」

そう言いながら、お祖母さまは私の前のお茶の入った湯呑をさしだしてくれた。
湯呑に触れた途端に、指先から伝わる温かさにホッとしてる私が居る。


「敬里が部屋にこもって、今日で三日目ですね」

「あぁ。もうすぐだよ。
 あの子はちゃんとケジメをつけて戻ってくる。
 男にはケジメがつけたくなる時もあるもんだ」

「えぇ、貴方もそうでしたわね。
 瑠花さん、女は殿方が向き合おうとしたケジメの邪魔をしてはいけませんよ。
 ただ殿方の決意を信じて、ドーンと構えて御上げなさい。
 殿方より女は強いんですよ。心が。

 殿方が何かを成し遂げた時、その全てを包みこむ家であればよいのです。
 殿方を包み込む家なればこそ、女は愛を超えるその先の未来を見いだせるのですよ」

柔らかな口調で紡ぎだす、お祖母さまの言葉は理解できるようで、完全には理解できない。
頭ではわかりそうな気がするものの、感覚ではとらえることが出来ないあやふやなもの。


だけど伝わってくるのは、総司を信じて待ちなさいと言うことと、総司が何かを成し遂げた後の家。
戻れる場所でありなさい。

それはわかった。