「おいっ。皆、聞いてくれ」

ある日、土方さんが隊士たちを集めた。

その日、土方さんが告げたのは鳥羽街道まで新政府軍が進軍して来て、
戦いが始まっているというものだった。


遠い江戸で起きた薩摩藩の調略にのせられて、
庄内藩は2000人の兵を率いて三田の薩摩藩邸を焼き討ち。

その一報が大坂に届いて、薩摩討伐がくだされたと言うことだった。


土方さんが告げた言葉に、思わず両手の握り拳に力を込める。


いよいよ、始まるんだ。
ちゃんと頑張って戦って私たちの世界に帰るために生き抜かなきゃ。


そんな私の手を、舞は優しく両手で包み込んでくれた。



その頃になると砲声が時折、響くようになった。




「各自、持ち場について出陣に備えよっ!!」



凛っとした声で指示を下した土方さんの言葉に、
隊士たちは一斉に動き出す。


「山波、加賀、お前たちはこっちだ」



準備に他の隊士たちと同じように備えようとした私たちを、
土方さんは呼び止めた。



「お呼びでしょうか?」

「あぁ。
 俺が呼んだら悪いかよ」

「いえっ。
 副長、ご用件を?」

「って、あぁ、こんな時だけ副長なんて改まってんじゃねぇよ。

 山波、加賀。
 引き返すなら今だ。

 今夜、明日にでも伏見でも戦いが起こるだろう。
 15000対3000。

 数の上では俺たち幕府軍が勝る。

 だが……錦の御旗が立っちまうんだろ?」



突然の土方さんの言葉に、私と舞はお互いの顔を見合わせたまま無言で頷いた。



「土方さんはどうして、それをご存じなのですか?」


今も土方さんを見つめることしか出来なかった私の隣で、
舞が切り返してくれた。



「あぁ、俺が知っているのが不思議か……。
 総司だよ。

 大坂に旅立つ前に、総司が俺の部屋に尋ねてきて教えてくれた」



その言葉に、私と舞は思わず言葉を飲んだ。