足を負傷した土方さん、そして秋月さんを含めた負傷兵たちを連れて、
私たちは今市本陣へと辿り着いた。


そこで手当をしてもらった土方さんは、足の傷のせいか少し発熱していた。


それでも土方さんは、決して体を横にすることはせずに、
隊士たちを気にかける様に、声をかけていく。



「手当は終わったみたいだな。
 傷はまだ痛むか……」

「そんなことありません。
 自分はまだ戦います。
 それより、ひっ土方さんのお体は?」

「あぁ、俺の傷かぁ。
 医者が大袈裟なだけだ。
 こんなもん、唾でもつけときゃ治る。

 遠からず、また移動になるだろう。
 それまで体を休めてくれ」



そんな風に、自分の隊に居た負傷兵一人一人のところに顔を出しては、
隊士たちと会話を続けおえた後、土方さんの体はぐらりと一瞬揺らいで、
慌てて壁にもたれかかるように、体を床に倒れるのを踏みとどまった。




「土方さんっ!!」

「うるせぇよっ。
 山波っ。デカい声出すなって、頭に響くだろう」



そう言って土方さんは自分の部屋として使える場所へと、
ゆっくりと歩を進めていく。



そんな土方さんの傍に行って、私は壁に触れている手と逆側の腕を肩に巻き付けて、
土方さんが歩きやすいように体を支える。



触れ合う体から伝わってくる、土方さんの体温の高さ。
額に滲んでいる汗。
そして……息遣い。


傷口が炎症を起こしているのかもしれない。



「山波、この一角に座らせてくれ」


土方さんが言ったのは、作戦会議を行う部屋に設けられた一角のようだった。

机の上には、この辺りの地形を模したものが並べられていて、
そこに配置個所を示しているのか小さな棒や碁石などが置かれている。




「土方君、負傷した傷はどうだ?」

「お世話になりました。
 完全に治るには少し時間がかかるそうです。

 申し訳ありませんが治療のため、明日の早朝より会津の松本先生の元へ行きなさいとの
 医者の見立てでした。

 このような戦況の折、離脱を余儀なくされまして申し訳ありません」


「そうでしたかっ。
 明日の移送の手配も筒がなく手配しておきましょう」



土方さんが目の前の人に丁寧な口調で話しかけるも、
私には誰か全くわからない。